美しい人間とダメダメ芸人
いやぁ~、世の中にこれほど美しい出来事 があるでしょうか。本当に心が洗われるような話です。
昨日、神楽坂某所においてとある会合が行われました。そこへ三遊亭金八さんという名前も
聞いたことのない、三流の芸人さんが宴会の余興を 頼まれてやってきました。
会場は気軽な立食 の場で、善良な男性女性が、なごやかに歓談していました。
そこでその、三流芸人さんは考えました・・・「そういう場だから、何人の新しい役員の方に
壇上に上がっていただいてインタビュー して、そのあと今日は神楽坂まつりで阿波踊りだから、
こちらも寄席の踊りでにぎやかにご機嫌をうかがえば、幹事さんも喜ぶだろう。」・・・と
会場には音響設備がなく、急遽CDラジカセを仕度してもらう・・・
フロアの人が「あぁ、金八さん。覚えてますよ、去年も確か・・・」と。こういう三流の落語家に限って
酒席の余興だけは、ミョーに取り繕いがうまいので始末に負えません
時間がきて、登壇。新しい役員の方のインタビューをこなして、踊りにかかろうとすると・・・
「CDが違う」・・・そうなんです、なんでも違うCDを持って来たとかなんとか。
事情はともかくも、音がなけりゃ踊りはできません。金八さんどうするかと思いきや・・・
「いいです、唄いながら踊ります」
そんなの聞いたことはありません。江戸前の芸で唄いながら踊るって、イナカの盆踊りじゃ
ないんだから。「イヤだねぇ・・・こういうの」
ただ、立食パーティーの余興なんてものは、どうしても空気が散漫なので、きっちりした
芸よりか、かえってこういうイナカ臭いような、限りなくシロートに近い物の方が
ウケる時があるのです。
実際、お客様の手拍子で唄って踊ってやんやの喝采。
これで炭坑節と安来節でどじょうすくいでもやったらおひねりが飛ぶでしょう。
ともかくも終わって、会長が「今日はありがとう」とご祝儀らしきものを金八さんに出したのですが
「・・・いいえ、今日は要りません」
なんと、金八さんは「ご祝儀を辞退」したのです
なぜなんでしょう。それはわかりません。彼自身何か期するところがあったのかもしれません
いやぁ~、美しいですねぇ・・・資本主義の昨今、いただいて当然のものを断ることのできる勇気。
中々、出来ることではありませんよ・・・こんな美しい人間がまだ存在していたのです。
しかし芸人としてはゼロですな。芸人は頂くものは、何でも頂かないと。
いただきたいものが出てこない時には、「引っ張り出す」「もぎ取る」というバイタリティーも必要です